歩いて、飲んで、聴く。

私は今、トリニティ・カレッジの中庭のベンチで学生のふりをしながらiPadを膝に乗せ、なんだかハツラツとした気分。
日本で卒業した大学でこんな気分になったことないなあ。
アメリカで学業に励んだことになっているメリーランド大学でも経験したことないわ。

なんて申しましても、すでにみなさんご承知の通り、アイルランドで一番といわれているこの学校には現在学生はいないんですよ。
もうお休みだもん。
大学構内をうろついているおっさん、おばさん、ガキどもはみんな観光客なの。
ドイツ語だのスペイン語だのl韓国語なんかがよく聞こえてきますね。
先程までピーカンの青空だったのが、一転にわかにかき曇り、いつ雨が降り出してもおかしくないんですよ。
アイルランドらしくていいわ。
なぜここで座り込んでいるかと申しますと、疲れちゃったからですね。
昨日はヒースローバカ空港をひたすら歩き回り、到着してから、ダブリンで日曜だけ開かれる蚤の市に道に激しく迷いながらたどり着いてみたり、蚤の市はロンドンのかつてのカムデンを100分の1くらいにしたものだったので、再度激烈に迷いながら、ホテルに戻り、ラオスに仕事で一緒に行ったことのある若いお嬢さんがちょうどダブリンに留学していたので、一緒にパブ巡りですよ。
彼女によれば「ダブリンって渋谷くらいですよ」ということだったのでジャンジャン歩く。
確かにどこにでも歩いていけるのよ。
蚤の市の行き帰りで迷わなけりゃ、あんなとこ渋谷駅から並木橋くらいじゃないの。

ともあれ、私たちはちょいと歩いてミュリガンズという名を知られたパブで、ギネスをクイクイっと飲み干す、ハープを空にする、といい調子で最初からダッシュですよ。
しかし、私は昼メシを食っていなかったので、倒れそうですわ。

メシ食いに、と再び歩き回りつつ、あら、ここは面白いわね、こんな路上でとんでもない演奏をぶちかましている爺さんたちは何者かしら、このパブは中ではライブやってんじゃん、こんなギューギューの状態じゃ、ビールも頼めないね、頼まなくて平気ですよ、聴き逃げOKですよ、あらららら、アイルランド人はみんなふとっぱらだねえ、なんて言いながら、ダブリンで一番古いパブレストランだっけ、まあ、そんなところまで再び流浪の民となって、歩き続ける私と村松さん。

料理のことは今日は置いといて、とにかくよく歩きましたのことよ。
歩いて、始めて街の感触がつかめます。
バスで回ってるんじゃわからないんですよ。

そんなわけで、本日はゆっくり宿を出たんだけど、またもやON THE ROADですよ。
ケルアックはアイルランド人?
関係ないね。
フランス系アメリカ人でしょ。
ジェイムズ・ジョイスのダブリナーズはあまり好みでなかったんだけど、ダブリンでユリシーズの気分に浸りたいって方もそういえばいらっしゃいました。

ああ、青空がまた見えてきたわ。
気温は20度くらいらしいんだけど、日が差すと肌が焼けるような強烈な紫外線で黒光りしている頭がさらに黒くなって、ピッカピカ。
日本人だと言ってももう誰も信じてくれません。

しかしさあ、私の宿は繁華街の中にあると言ってもいいようなとこなんだけど、夜中の3時におしっこで起きた時も、外は馬鹿騒ぎってのは、やっぱりここはアイルランドってことなのね。

トリニティ・カレッジのザ・ロング・ルーム。
法律関係の本が収められておりますが、1861年に完成した言葉を失うほど見事な作り。
現在使用されている本はここにはございません。
別にライベラリがございます。
でも、こんな環境に置かれたらやっぱり私は研究者になっていたと思うな。
ラングドン教授の宗教象徴学とかさ。