郊遊[ピクニック]

ブニュエルとダリが制作した「アンダルシアの犬」を最初観た時はただただ混乱して、不安で潰されそうになりました。
子供の頃に観たような気がするんだけど、ありゃもう少し大人になってからにした方がいいね。
昨年、スペインに行ったときダリ展をやっていてそこで上映されていました。
何度も観ているので「ちょっとあれだよ」と警告していたんだけど、絶対に観たことがあるはずの母親は「絶対観たことない」と主張し、出口のないやり取り。
妹二人は本当に観たことがなかったようで、「なに〜、これ!」と目を背けておりました。
まあ、普通の反応ですな。

あの映画は人の心に巣食って、いつか思い出させてやる、とその機会をうかがっている。
一度観た人間は一生取り憑かれることになるぞい、なんてB級ホラーのような解説は無用。
一度機会があったらご覧になってください。
私を恨んではならんぞい。

台湾映画界が誇る巨匠、ツァイ・ミンリャン監督の引退作が明日公開されます。
それが郊遊[ピクニック]であります。
これ、どういうふうに感想を述べていいのかわからないんですよ。
ずいぶん前に試写で観て「う〜ん」と唸ったきり、深く深く私は湖の中に沈んで行きました。
暗い湖ね。
でも、濁ってはいないの。

資本主義の行き着く先で、取り残された悲惨な父子の物語、とか書いてもしょうがないですよ。
監督自身が明るく捉え直してくれと言ってるんだから。
インタビューでは「ある意味で考えると、家賃を払わなくてもよいわけですし、子供たちは学校に行かなくてもいい暮らしをしているわけで、生活をするということから解放されているのです」とか言っちゃってるもんなあ。
かんとく〜、ホントにそ〜なの〜?とまた大混乱。
出演者は監督の作品の常連。
子役は主演している俳優の甥と姪。
女性が三人でてくるんだけど、この方々とも最後の作品になるんで全員出てもらちゃった、みたいな。
誰が誰だかわかんなくなるんだけど、そんなこと「私にはもう重要ではなくなっていた」とかのたもうていらっしゃる。

引きずるんだよなあ。
この映画、あらゆる意味で引きずります。
もうヒントはあげませんから、自分で観に行くかどうかは判断してね。

2013年ヴェネチア国際映画祭で審査員大賞、その他、様々な賞を受賞しております。