グミの季節

事情があって山口に帰っていった友人からメールが届いた。
「うーん。俺はこのままでいいのか」と唸っちゃったんで、無断で一部抜粋しよ。

「田んぼの稲がすくすく育ってきて、周りの緑がとても濃くなりました。
『6月9日・18:00〜 ホタル祭り』とあちこちに旗が立てられているので、
お祭り前の下見に行ってきました。
20:00頃に来るとこの辺りいっぱい飛んでるよ・・と言われたのですが。
驚きました。小さな小川の側の木々の茂み、遠くに見える山?至る所で光っています。
こんなに多くの螢を見たのは初めてです。
火垂るの墓』や東南アジアのどこだったかテレビで放送された螢の群れ、
それを思い出させるくらいでしたよ。」

彼女は萩の町からずいぶん離れたところに住んでいるらしく、「30分車走らせないとコンビニがないとこなのよ」(メモを取っていなかったのでやや不正確なところあり)と嘆いていたが、離れてるから今どきこんな幸せな生活がおくれるんじゃん。贅沢な話だよ。

下関でも車で30分くらいのところの小川に蛍が梅雨時期に飛んでいたが、もう10年くらい見ていない。まだいてくれてるんだろうか。

帰る間際、みんなで酒飲みに行ったら「淋しい、淋しい。みんな遊びに来てね」と本当に淋しそうにしていて「絶対行く〜」と肉食系代表女子を筆頭に釣ったばかりの魚おろして、山でイノシシ撃って、毎晩大宴会だ、と盛り上がっていたのだが、まだ機が熟していないのか、話がまとまっていない。忙しそうなので私は仕事で門司に行く予定があるので、一人で下関、萩ツアーを敢行しようと考えている。

旦那さんとお二人で広大な土地を開墾して、野菜王国を作ろうとしているらしいので、魚、イノシシ、野菜全部揃った上に、出鱈目に広い家を借りていて、どこでも使い放題らしいので、何の遠慮も要らない、はずだ。

そんなことを考えていたらもう一通メールが届いた。

「昨日は夕ごはんの後、
散歩に出かけ、デザート確保してきました。
手前の小さい器のが普通のグミ
その5倍はありそうな完熟巨大グミ。
すっごく甘くて美味しいんです。
緑の花はニンジンの花。ニンジンの臭いがします。
みんな道ばたにあるものばかりです。
誰も採らないので、道にいっぱい熟れすぎて落ちているの。
山口はナカナカいい所なのでしょうか。
今、スーパーでは9円戦争?
ニンジン・キュウリ・ジャガイモ・タマネギ・カイワレ
お一人様5個だけれど、みんな9円。
作るより安いです。」

ニンジンの臭いのする花は私が行く時は捨てておいて欲しいが、一体この人の住んでいるところはどの時代の日本だ?戦後か?戦前か?平安時代か?

グミはね実家にもあったんだよ。
でかいグミの木でちょっと目を離すと道路、お隣の敷地に枝を伸ばし、迷惑をかけるんで大変だったらしく、母親が「だーれもグミなんか食べんし、熟れて落ちた実が汚いんで切った」と告白したとき「なんちゅーことするんか」と怒ってみたが、こっちも向こうで暮らす気がないんで、諦めるしか仕方がない。

グミの実は少しさくらんぼに似ているが、ぷよぷよしていて食感は全く違う。完熟してくれていないとすっぱくて食えない。充分に熟すと酸味さえ飛んでしまうくらい甘くなる。しかし、茶碗一杯の米粒の数くらい実をつけるので、一気に食わなければすぐに落ちてしまう。このタイミングが難しい。
最初は「うまい、うまい」とむしゃぶりつくのだが、飽きる。「もう、いらーん」となってしまう。

グミなんてもう30年くらい食ってないんじゃなかろうか。
東京で売っているのを見たことがない。
ロンドンにもなかった。
北限があるんだろうか。

調べてみたら中国地方では「ビービー」とか「ブイブイ」とか呼ばれることもあるそうだが、それこそいつの話だよ。全く聞いたことがない。下関が都会だったからか?山の中じゃそう呼んでましたか?

グミは送ってもらっても途中で痛んでしまうか、柔らかくてつぶれてしまうのでお願いもできない。
行って食うしかないんだが、現在私は自宅で缶詰の身である。
仕事が一段落するまでグミ、生き残ってないかな。
絶対無理。

田舎で暮らす。
仕事がない。
年金も少なくともあと10年はもらえない。
映画館もない。
まだ無理だな。

えー、無断でメール載せちゃいましたけど、訴えないで。
名前出してよかったら、その旨ご連絡ください。コピーライツマークつけときます。
ついでに写真も拝借しよっと。
これがグミの正体だ。