マーラーとバーンスタイン

1日の終わりにはマーラーを聞く。
アルマニャックのグラスを傾けながら、あのやや芝居じみたと言われても仕方がない劇的な音の波に翻弄されると、高揚してきて寝られなくなる。

寝られなくなるじゃあ困るので、マーラーは夜アルマニャックを飲みながらなんて聞かない。
そもそもアルマニャックなんてないじゃん。
おまけに積読で崩壊寸前の部屋の混沌はますます底が見えなくなってきている。
以前はデスクの上は何とか資料を広げるスペースを確保していたのだが、もう書きかけの原稿や資料や本や名刺で、キーボード以外見えなくなってしまった。
グラスなんか置けない。

夜、大音量でマーラーを聞きたい。
指揮をしたい。
歌いたい。
その望みがかなうことがないことは私がよーく知っている。

ともあれ、仕事がひと段落したら部屋の中のものを一度全部出して、本の整理をしよう。
資料はまとめよう。
いらないものは捨てよう。
いらないものがないから困っているのだが。

マーラーをはじめて知ったのは24の時か。
すごく遅い。
ほとんどクラシックなんて聞いたことがなかったんだから、お恥ずかしい次第です。
某酒メーカーのCMを作る仕事をしていたのだが、隣の席の坂本さんがマーラーの「大地の歌」を使ったぶったまげるような作品の担当をしていて、初めて目が覚めた。
CMはすごかったが、マーラーは衝撃だった。

それからマーラーのCDを買うようになったのだが、当時はまだクラシックの名盤は高くて若い私には大人買いできるような余裕がなく、一枚一枚そろえていった。

マーラーいいよー。
今ではクラシックのCDも他のインドポップスやバルカンブラス、ラテン、アフリカのものと区別なく購入している。CDはどんどん増える。どうなっちゃうんだろうか。
マーラー交響曲はほぼ持っているのだが、人気のないものは意外に売っていなかったりして全部は揃っていなかった。1番なんか3枚もあるのに。それぞれ味が違っていて悪くないのだが、全部並べてみたいのは、当然でしょう。

そしたらあなた、数ヶ月前にアマゾンからお知らせが来たのよ。
バーンスタイン指揮、ニューヨークフィルでマーラー交響曲完全版ってのが出ますよ、って。
なんで、そんなものが来たんだろうか。揃っていないのを探したことがあったかしらと不思議に思ったのだが、「へー、どれどれ」と詳細をチェックしたら、1番から10番まで12CDにすべて収められているという。「あら、大地の歌は入ってないね。でも持ってるし」と値段を見て、桁を何度も確認した。おかしい。何かの陰謀か。流行の詐欺か。
これです。

The Complete Mahler Symphonies

The Complete Mahler Symphonies

これは少し高くなっているが、私が買ったときは1999円。
ありえるかね。ありえないがあった。
予約していたのが先週届いて、毎日仕事しながらきったない部屋でバンバン鳴らしながら聞きましたよ。
素晴らしい。
値段が素晴らしいが、音もすごい。

これ買わないと、後悔するよ。
マーラーがなんだか知らない人も後悔する。
とにかく買って聞いてみて。

人に買い物勧めるなんて、ノーズフルート以来だな。

これここで紹介していいのかどうかわからないけど、プロモーションだと思って許して。
これが大地の歌。一部ですけど。
いいなあと思った方は、これは完全版には入っていないので、購入してください。

どうにかしないと本当に仕事ができくなってしまった私のデスクの写真。
興味ないですね。