追悼 トニー・スコット

驚いた。
自殺と聞いて、何が原因だったのかは知らないが、心が折れそうになった。

故人を直接知っているわけではないのだが、彼がイギリスでもCMの仕事をしていたリドリー・スコットの会社、RSAには何度か足を運んでいた。日本のクリエイティブの方々にこういう会社やディレクターと仕事をするととても刺激になる、発見があると紹介していたのだが、さっぱり反応がなくて意気消沈していた時期があった。

トニー・スコットはすでに1986年に「トップ・ガン」を発表し、活動の舞台をアメリカに移し、CMの仕事はほとんどしていなかったのではないかと思う。
兄のリドリー・スコットは自分が気に入った仕事だけはたまに受けていたようだが、制作費があまりにも高いのと日本からのコンテには興味を示さなかったので、私の知る限り日本のCMは撮っていないはずである。

兄が超大作、超話題作を撮って、常に映画界に君臨していたのに比べれば、トニー・スコットの場合は手堅く優れたエンターテインメント作品を撮る監督と評価されていたと思う。
その評価は必ずしも間違っていないが、私はほとんどの彼の作品を見ている。破綻がない。押さえるべきポイントは必ず見せ場を作っている。兄とは違う彼の人柄がしのばれるような映画だった。

彼の代表作は「トップ・ガン」と決まっているように報道されるが、それは個人的、心情的には間違いである。
1993年の「トゥルー・ロマンス」があらゆる点で他の作品を圧倒している。
タランティーノが脚本を書き、トニー・スコットが監督と聞いたときはどういう発想でそんな組み合わせになったのかと頭をひねったが、仕上がりは見事でタランティーノのメチャクチャな銃撃戦をうまく処理しつつ、ラストシーンへの持って行きかたは評価するとかそういうことでなく、ただただ涙を流した。

記憶違いかもしれないが、そのシーンで聞こえてくるのはこの映画のテーマソングとされているハンス・ジマー作曲の「You're So Cool」で、私は条件反射的にこの曲を聴くと泣いてしまう。
担当した番組では必ずこの曲を一度は流している。いつも泣きそうになる。

残念でならない。

この映画はDVDを買っても後悔しない。一生ものである。
予告編もつけておきます。

トゥルー・ロマンス [DVD]

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