天地明察

正直期待しなかったんですよ。
こういうロケが多い大作は構えだけ大きくて、ある程度ヒットしても筋を追っただけになってしまい個人的にはずっこけてしまうことがほとんどなんだけどね。
娘が見てきて、「絶対に行け。行かないと口きいてやんない」と脅すんですよ。
それは困るから行きました。
岡田准一が好きなだけじゃないの。俺も好きだけどさ」と疑いました。

いやこれがワクワクだらけで、下手すると原作より面白いかもしれない。
やっぱり岡田君はいいね。
夢中で、しかも笑顔で和算の問題に取り組むあの無邪気さ。サイン、コサイン、タンジェントで数学から降りた私も、頭が数学を楽しめるように作られていたらどんなに楽しかったろう、ととても羨ましくなりました。

日本全国を一年以上かけて歩きます。
天体観測をする人間はあんなにいい人ばかりなんだろうか、と言う疑問がチラリと頭をかすめたけど、いい人出してくれるほうが、気分がよろしい。
いい奥様もいらっしゃるし、スリルもある。

碁打ちが主人公だからというわけであるはずがないが、ビシッ、ビシッとここだというところをはずさず打ち込んでくる。長いんですよこの映画。でも飽きない。
正統派エンターテインメント、保守本流の面白さだ。保守本流は関係なさそうだけど、そんな感じ。
これ意外に恋人同士で行くのもあり。

というところで今日は終えてもいいんだけど、せっかくだから暦の話を少し。
ネパールには何度も訪れているが、ここは暦が少々ややこしい。

何も知らなかった若い頃、ネパールで正月を迎えたことがある。
無知とは恐ろしいもので、きっと何かそれなりの派手なイベントでもあるのではないかとずっとカメラを握り締めていた。外国にいればどんな楽しいことがあるんだろうって期待するじゃん。
しかし、大晦日にネパール人の行動に変化が起きていなかったので不思議に思っていたら、1月1日はいつものように始まり、いつものように終わってしまった。
間抜けな話である。
暦が違うんだよ。馬鹿だね俺は。

といってもこれが意外にややこしい。
基本的にはネパールの正式な暦はヴィグラム暦という太陽太陰暦が使用されている。
新年は4月中旬で大きく移動することはない。
その時期にネパールに居たことはないので、どんなことになっているのかよくわからないが、大掛かりな祭りが催される場所もあるようである。

本格的にややこしいのはここからで、ネパールの中心部はカトマンズ盆地であるが、その中でカトマンズが町としては群を抜いてでかい。
パタン、バクタプルという町もこの盆地の中である。
そのカトマンズ盆地はもともとネパールという国の名前の由来となったネワール族が多く住んでいたところで、ここではヴィクラム暦とはまた違うネワール暦も並行して使用されている。
こちらの新年は秋にやってくる。

また、どうも民族によってはさらに別の暦も存在しているらしい。

私はカトマンズ盆地に張り付いていることが多いのだが、
正直申し上げて、何暦が使用されているのかよくわかっていない。
何暦であっても飛行機等の予約はグレゴリオ暦でなされるので、生活する上でドヒャー困ったということはないのだが、
「おっと、それはいかがなもんでしょうねえ」
ということはある。
領収書(といっても数百円程度のことではあるが)をもらう時に注意していないと
「何なのこの数字は?」
という紙を渡されてしまう。
ご自分で使用している暦の日付が書き込まれるのである。当然、年も全く異なる。
「2008年でお願いね」
と頼むと、そいつは面倒いなあ、という顔をされながらもカレンダーと照らし合わせながら、グレゴリオ暦でちゃんと書いてくれる。そうでないと日本の税務署が許してくんない。
「あんた未来から来たの?」
じゃ、困るんだよ。

「暦は吉凶、方角を正しく知る上で欠かせぬものなり」
ってなことは私にはないが、「お正月は今年は1月3日です」と言い渡されるのは困るからやっぱりちゃんとしなきゃ。

しかし、ネパールでも最近はグレゴリオ暦も使われているようで、年末に「Merry X'mas & Happy New year」とかカードが送られてくる。そんなんせんでもええで、と言いたいが、やはりだんだん必要になってくるのだろう。ちょっと淋しい。

写真はカトマンズのダルバールスクウェア(王宮広場)にあるシヴァ寺院。もう王様はいませんから旧王宮広場と訳すのが適当だった。