むつみ村のお祭り その1

タイミングよく萩市のむつみ村での出来事を書こうと目論んでいたが、目論んでいるうちにどんどん古い話になってしまうことに気が付いた。お祭は11月3日のことだったのにすでに10日以上経過している。

最近の大倉のブログは田舎話ばかりでもう少しとんがったことはないのか、とイライラされている方が隠れているような気がするが、所詮私は田舎もんである。かまわん。迷走なんだからインドに行ったり、むつみ村で過ごしたりしているんだよ。

「世界を見るには日本の路地から始めよ」という言葉がある。
誰も知らないだろうと思うが、私が作った。
人の臭いを身体で感じなさい、という深い意味がある。
イタチだの猫だのがいる場合は、それも含めて生命の息吹を感じなさい、ということでもある。
なんだかわからない作り物がおいてあったり、窓が平行四辺形になってたりしたら、人間の営みの可愛らしさを感じてもいい。
同様のものがどの国の路地に行っても発見できる。
つながっていないことなんて世の中ないんですよ。

「人間は旅に出ても自分の器以上のものを持って帰ることはできない」
これは私ではなくもっとちゃんとした人の言った言葉。
いい言葉でしょ。

さて、文化の日はむつみ村周辺ではお祭りモード満載である。ショッピングモールなんてものは存在していないが、道の駅がある。
道の駅はいいね。どんな麺がおいてあるのかワクワクしてくる。野菜も「おお、こんな大きなキャベツが100円だ」「この漬物は少し甘そうだな」「この山本隆浩さんの作った白菜は腹が座っている」とかいろんなことで楽しくてしょうがない。

都会の同じような店しか入っていない商業ビルには5分といられないのだが、道の駅にはつい長居してしまう。

最初に訪れたのは「道の駅 ゆとりパークたまがわ」。ここは厳密に言うとむつみ村ではないと思われるが、車で少し走ると到着するので、むつみ村文化圏と言っても問題ないんじゃないかな。
そこで「江崎漁業 さかな祭」が開催されていた。
盛りだくさんだ。

9:00〜 地元のいりこ店頭販売
10:00〜いわしの煮売り 無料150食
10:30〜鮮魚販売会
11:20〜お刺身試食会 無料200食
12:00〜もちまき

パパ前の晩、飲みすぎちゃって当日動けなくなったので、我々は3人で魚を見つつ、もちまきでガッツを見せることにした。
鮮魚売り場はすでに荒らされており、残りわずかになってしまっているが、はまちの小さいやつ「やず」とわたり蟹が売れ残っており、凄まじいことになっていた。
やずと言っても一匹40センチはある。これをなんとしてももちまきまでには売りつくさねばならない。ナイス。おじさんたちの連携が崩れ始めていた。端から聞こえてきた。

「もー、6匹300円でえーわ、はよもって行き」
「おい、向こうじゃ6匹300円で売りよるど」
「そりゃ、なんぼなんでもいけんわ」
「いけんか」
「いけん」
「そんなら3匹200円じゃ」
「3匹200円」
そこでかよちゃんが「ちょうだい」と声を上げた。
「3匹もどうやって食べますか」
「滝ちゃんが持って帰ればいいのよ」
立派なやずが3匹200円。どういうことかね。

私はすごいことになっている売り場を後にして、一人うどんを食いに店内に入った。
下関のうどんは茹でてある、全くコシとは縁のないものなので即食べられると思っただけで深い意味はなかった。いりこ出汁だからうまいよね、くらいのもんだ。
シシうどんというのがある、イノシシうどんだ。まさかライオンじゃないと思ったが、イノシシをこんなところで食えるなんて僥倖である。

チョロッとのっかているくらいでしょ。
しかし、このうどんがなかなか出てこない。下関駅だと5秒で出てくるのに手際の悪いことだ。
10分位してようやく出てきた。つい大盛りにしていたので、迫力あるよ。イノシシ肉もしっかりのっている。わかめ、かまぼこ、たけのこもこれでもかと押し込んである。
一口すすってびっくりした。
超本格うどん。讃岐うどんのような「かたーくて、おいしー」んじゃなくて最初の歯ごたえはふんわり、その後もっちり、最後にしっかりだ。三段階システム。
これはこの麺食いオヤジも初めての経験。
かよちゃんも滝村もいなくなっている店内で「うまいうまい」と声を上げて食っていた。
シシ肉はしょうがで煮てあり、臭みまったくなく、歯ごたえも堅からず、しかし、「肉を食うておる」実感がある。
ノーマークだよな。こんなところに五つ星のうどん屋があった。
飛行機代かけても行く価値ありだ。時間もかかるよ。行くかどうかでどれだけうどんに人生賭けているかがはっきりする。

これで大盛り、550円。

私がうどんを貪り食っていた間、滝村は渡り蟹に食いついていた。
4匹で1000円のところ、うじうじしていたら8匹入れてくれたそうな。
田舎の人は何考えてんだか。

すでに外のムードはもちまき一色である。
トラックの上で準備が進む。
人はどんどん集まってくる。

もちが撒かれるころには、殺気が漂っている。
放られた。
私は写真を撮りながら、素手でキャッチしようと試みた。
両方失敗した。
もちはビニールに包まれているのをひとつだけ確保したが、これじゃあね。
この場面でもちも写真もというのは間違いである。
逆光を補正できなかった。

しかし、この日のお祭は実はこれからが本番であった。