カンボジアに向かう皆様

カンボジアが人気である。
一昨日、バーで修行していた時に「来週からカンボジアに行くんだ」という若い女性に会った。
休暇でゆるりと過ごすんだそうです。
時代は変わりましたぜ。

タイやベトナムで沈没していた日本人も物価上昇に追われて、より安いカンボジアに居を移し始めたという話を何カ所かで聞いた。カンボジアもあっという間に経済発展を遂げるだろうから、そういう方々は今度はどこに移るんだろう。日本だったりするかもしれんな。

で、カンボジアと聞いてまず思い浮かぶのはアンコールワット遺跡群なので、近頃では首都プノンペンに寄ることなく遺跡のあるシェムリアップにダイレクトに入ってそのまま帰ってくる人が多い。
大変残念でございます。

アンコールワットは確かに素晴らしい遺跡で、数日ないとじっくり繊細な浮き彫りを鑑賞することもできないし、全体を見渡して仏教、ヒンドゥー教が遺跡の中で混交していったり、排除し合っていた痕跡に気づくこともない。また、遺跡は想像しているよりもずっと広い範囲に点在しており、本気なら3日間は考えておいた方がいい。
大方の皆さんは途中で飽きちゃうんだけど。
そうは言いましても、見るに越したことはない。
是非お出かけください。

ただ、シェムリアップは完全にアンコールワット観光の地、と化しているので、町の中も観光客相手の店が多いし、当然観光客であふれている。そういう意味で申し上げますと、面白くないです。全然面白くない。
アプサラという民族舞踊を見せる場所がいくつかあります。
舞踊自体はあでやかでたおやかでしなやかで、これはもう必見なんだけど、晩飯食いながら見るんだよね。ディナーショー的なものになっております。団体客がひしめく中、親切なお店の方が一人で入って来た私を最前列に案内してくれて、舞踊を堪能させてくれたんだけど、心持ちはやや複雑でございました。
帰りにバイクタクシーで宿に戻った時、運転手は「よかったろう」と前置きをした後で、寂しそうに「本当はあんな風に見せる舞踊じゃないんだよな」とおっしゃっていました。そうだよな、と私も少し寂しくなりました。

カンボジアポルポトによる大量虐殺があったため、トゥールスレン収容所跡等、なぜ人間はこういう過ちを犯してしまうのかと考え込んでしまう場所がいくつもある。そういう所にも訪れて頭を抱え込んでいただけると幸いです。
で、そんな場所で愕然とすると今度はカンボジア人の人の良さに感激します。私は誰も行かないような田舎にバスで向かったときに隣に座ったおばちゃんからサトウキビやなんやかんやを笑顔で勧められまくって、大変楽しく過ごしたことがあります。
プノンペンは都会の喧噪を味わうには最適な都市で、日々変貌していく都市のダイナミズムを実感できます。

内陸部の田舎の町には何にもないけど、何にもないことに安心します。
シアヌークヴィルというカンボジア唯一のシーサイドリゾートでは安宿でもおもちゃのようなプールがあったりして、大金持ちになったような気分が味わえる私のような人間もいます。
夕食は浜辺でビール飲みながら食えるしね。
意外なところでそんなことがあると大変得をした気分になります。

アンコールワットだけで帰ってくるのはもったいないよ。
2週間くらいはゆっくりしてって。

プノンペンカンボジア