ガーリック・マッシュルーム

30年近く前、毎週私はわざわざ稲毛までテニスを楽しみに行っておりました。
「大倉とテニス?はっ?」と顔を歪められた方もいるんでしょうけど、歴史は曲げられない。
テニスやってたんだよ!、とムキになることもないか。
高校のときの友人、モトブーが毎週稲毛周辺に住むおじさんやおばさんたちと仲良くなって、「すごい楽しーけー、あんたもおいでーね」と妙に積極的に誘うもんだから、中学の3年間、高校の1学期だけテニスをやっていた私は、ひとつ揉んでやらんとあいつはわからんな、とムキムキに力を入れて稲毛に出かけた。

軽く体を動かしてから、さて、まずは乱打から。
私の打つボールはすごいスピードでフェンスを越して行ってしまった。
何度やっても同じ。
「あんた、そんなメチャクチャなフォームでラケット振り回してどうするんかね」
モトブーに言われてしまった。
私のテニスは軟式テニスだった。
しかも個人的に軟式テニス界に革命を起こすようなフォームを開発してしまっていた。
誰にも真似できない見ようによってはスカタンなテニス。
それをそのまま硬式球でやったもんだから、当たるときはホームランだし、当たらなければスカだ。

モトブーはそのおじさんおばさん集団の中で一番ヘタクソだったので私を誘ったのでした。
まあ、その後毎週通ったので楽しかったんでしょう。
一度だけモトブーと組んで一番、二番のペアと対戦し勝ってしまったときは端からは失笑が漏れるほどキャーキャー声をあげて抱き合ったな。

その後、みんなで合宿に行ったりするようになって本格的なチーム作りをすることになり、名前を付けることになった。
仲良しテニスサークルだったので、ぼちぼちでエーやん、ということもあり、「稲毛ファーム」でどうかということになった。
一軍に上がる前の調整というニュアンスであります。
いいねえ、と全員が納得して「これからは稲毛ファームだ。オー!」と盛り上がっていたんだけど、翌週行ってみるととんでもない勘違い野郎が「稲毛ファーマーズ」というみょうちくりんなロゴを作ってきてしまっていた。
「いや、それじゃ稲毛農民になるじゃん。違うよね」となんせ人のいい方々だったので、正面切って「それは間違い」と言えず、そのまま気に入らない稲毛ファーマーズになってしまった。誰が畑耕してんだよ。

テニスのあとはモトブー夫妻と飯を食いに行く。
稲毛のカボチャワインというマンガからパクったと思われる店名の洋食屋さん。
そこで毎回必ず頼んでいたのがガーリック・マッシュルーム。
おいしくてね。
オリーブオイル、ガーリックたっぷりの中に激アツのマッシュルーム。
ガーリック・ブレッドを追加でお願いし、オイルに浸していただきました。

今考えりゃ、あれはスペイン料理のアヒージョだ。
あの頃アヒージョと言われても誰もわからなかったので、わかりやすくガーリック・マッシュルームにしてくれてたんですね。
ありがとうございます。

私は「WOMAN」の他に今クールはテレビ東京の「孤独のグルメ Season3」を欠かさず見ている。
普段は強面の役でグリグリやっている松重豊井之頭五郎役で輸入雑貨商をやっている。
この久住昌之原作、谷口ジロー作画のマンガは当然私は所有しており、繰り返しめくっている。

孤独のグルメ (扶桑社文庫)

孤独のグルメ (扶桑社文庫)

こんなにたくさんエピソードあったかしら、とよくわからなくなっているのだけど、いまだに原作久住昌之とクレジットしてあるのでどこかでどうにかなってるんでしょう。
「24」とか「ER」みたいになるんじゃないかしら。

この主人公の井之頭さんは酒が飲めないのに、うまい店を見つけるとそりゃないだろうというくらい食べる。
松重さんも実際に食っている、としか思えない。
朝から何も食べずに撮影に入っているでしょう。
うまそうに食べる。
ああ、これ食いたいなあ、と切実に腹が減ってくる。

今週の放送では「ガーリック・マッシュルーム」を出すスペイン風洋食屋さん。
カボチャワインみたいだ。
アヒージョとは少し作り方が違うが結果的には同じ味のはず。
あああああ。食いてー。

しかし、考えてみれば、私はこの間のスペイン旅行期間ほぼ毎日アヒージョを食っていたのであった。
そのアヒージョの中で一番うまいものを出したのがマドリッドのマイヨール広場から徒歩1分のところにあるメソン・デル・チャンピニオン。訳さなくてもいいんだけど、訳せば「シャンピニオンの家」。
大概の旅行案内の本には登場しております。
私は25年くらい前、宮田夫妻とこの店に来たことがあった。
この店はバル・レストランで望めば他のものも食べられるんだけど、ほとんどの客はシャンピニオンだけを食べて出て行ってしまう。店の側もそれで当たり前だと思っている。

今回本に出ているとは知らず、もう一度あの店で食いたいと天性の感で探し当てた。
これはちょっとあれだよ、この写真見たらスペインに行っちゃう人続出じゃないかな。
肉厚のでかいシャンピニオンに少しだけチョリソが振られており、絶妙の味付け。
当然ガーリックもガツンときます。
アヒージョと言えばアヒージョなんだけど、オイル漬けになっているわけでもない。
とにかく一度食ってみてくれたまえ。
一生私に感謝すると思います。
これが食える店は日本にはないと断言しちゃお。