劇団東京フェスティバルの「泡」

劇団東京フェスティバルというのは、仕事を一緒にしたことがある「きたむらけんじ」さん(名前がひらがななんで読みにくいので括弧つけました)が一人でやっている劇団で、それじゃ、劇団じゃないじゃん、と反撃する人もいるだろうが、これがちゃんと劇団として機能しているから不思議。
きたむらさんの人柄だな、と持ち上げようとしたら、今、本谷有希子さんのところもそうだったことを思い出した。
顔、スタイル、おまけに性別まで違うんだけど、どことなく似たところがある。
ほんわかとしたムードが似てるんだよね。
稽古のときのことはまるで知らないんだけど。

明日、23日までしかやっていない「泡」という芝居を昨日見に行って、今日明日、是非足を運んでください、ということに問題があるのは承知しているけど、時間があって、チケットがとれたならこの芝居は見た方がいい。
チケットぴあに確認してね。
http://t.pia.jp
おでんわ:0570−02−9999(Pコード)430−320

福島県小名浜ソープランドを舞台にした芝居だけど、引かなくていいです。
女性の皆さんも大声で笑っていましたから大丈夫。
男はバカだね、と笑い飛ばしてください。

震災被害にあった小名浜には一時バブルがやってきた。
いわゆる復興バブル、それに小名浜の場合は原発バブルも。
バブルはじきに消えてなくなる。
小名浜でもバブルは消えた。
バブルが消えるということは復興が完了したということを意味するのかと思いきや、どこにそんな兆しがある、と東京にいる私は全くその辺りの認識が薄くて、どこまで福島の復興が進んでいるのか理解できていない。
この芝居は震災から1年の時点の姿を描いているが、現在は「福島原発は完全にコントロールされており、汚染水はブロックされている」と「そんなメチャな」と東電ですら呻いてしまうようなことを言う人間もいるが、ではこの今、漁業関係者が何を思っているのかは断片的なニュースでしか知ることができない。
報道されていることがすべてなのかも疑いたくなる。

要はなにも知らないことに愕然とするのである。

しかし、小名浜に住む人たちは厳然たる日常を生きている。
ソープランドの日常も様々な日常の一つであり、それぞれの日常は必ずどこかで交差している。
同じソープランドの中に出入りする人たちの日常もまたそれぞれ。
みんなが同じことを感じ、考えているほうがおかしい。
「福島の人はみんな」と勝手に思い込んでいるとんでもない勘違いにこの芝居はドーンと風穴をあける。

芝居が終わってしばらくは席を立てなくなるような重いものではない。
「逆に元気をもらった」と清々しい気分で帰られた方も多いんじゃなかろうか。
芝居の最中、笑い声が絶えない。
少しだけ泣いた。

きたむらさんに帰り際、顔を合わせたので「面白かった。明日のブログに書くね」と一言だけ声を掛けたのだけど、実はどのようにまとめればいいのか頭の中がぐるぐるだった。

笑って泣いて、福島の今のことが気になって仕方がなくなった。
きたむらさんは一筋縄ではいかない。
東京から「東電は」「安倍は」「原発専門家は」とバカバカ言っているのは簡単だな、と落ち込んでしまった。
笑って、泣いて、落ちて、その後どうするのかは、私に投げられた。
福島の人にハイチュウを配って回ってもなあ、配られちゃったのはこっちだよ、と頭を抱えながらドストエフスキーの「罪と罰」を読みつつ電車で帰りました。

とにかく観てなくて、観たい人は考えるのは後にして、まず行きましょう。
大評判になっているので、チケットなかったらごめんね。