同性愛につきまして

本日の「ごちそうさん」。
ええ話や。ボロ泣きしちゃった。

本題。
ソチ・オリンピックがもうすぐで、また「寝られない毎日」を過ごす方々が増えるんでしょう。
それにつきましてはまた今度。

ご存知の通りソチ・オリンピックの開会式には出席しないと表明した国の首脳陣が今回は続出しておりまして、プーチンは必死で「誤解」を解こうと「エルトン・ジョン大好き」とか言い始めております。
首脳たちが行かないのはテロの問題もあるだろうと推測しますが、ロシアが「同性愛プロパガンダ禁止法」を作ったからであります。「オリンピックに来る人は問題ないよ、プロパガンダを禁じただけだよ」とおっしゃっていますが、この法律はどんだけでも解釈可能なんで誰も信じていません。
まさか選手を逮捕することはないだろうけど。

同性愛者に対する差別はロシアに限ったことではなく、いろんな国で犯罪者にされたりする法律が制定されております。
イスラム圏ではとんでもなく厳しいのだろうと思われがちで、確かに最近はかなり厳しく取り締まっているケース、時には死刑に処せられるケースも発生していますが、もともとイスラム圏では同性愛にはかなり寛容であります。意外かもしれませんね。
ホモセクシュアル(女性も含みます)の皆さんはお出かけの際にはご注意ください。

タイは同性愛者に対して寛容なんで、あの辺りの国はみんなOKかというとそうでもない。
ラオスはまあ寛容、ベトナムは厳しいけど犯罪にはならない。
マレーシア、ミャンマーでは犯罪行為となります。
ややこしいですね。

さて、これから長くなりますが私がカンボジアで体験いたしましたことを書かせていただきます。
カンボジアでは同性愛者は犯罪者にはされませんが、タイほど寛容ではないという国でございます。

プノンペンからアンコール遺跡を見るための町
シェムリアップに移動するのにスピードボートを利用した。

バスはつまらないし、
飛行機は高いので旅行者には人気のある交通機関である。

トンレサップ川から馬鹿でかいトンレサップ湖に入り、湖の北の端に着く。
雨季は5、6時間で着くらしいが3月の乾期は場所によっては
水が減って、のろのろボートになるので7時間かかってしまった。

朝の7時に出発。
カンボジアはほとんどいつも暑いのだが、この季節、朝、晩は涼しくなる。

スピードボートはスピードが命であるから、
それを味わうとなると屋根が一番よろしい。

他の旅行者もよどんだ船の中の空気より、さわやかな朝の風を期待して
当たり前のように屋根に陣取る。
私も当然屋根派である。
ところがボートが動き、すっ飛ばし始めると気持ちよかった朝の空気は
凍てつくような厳しい寒気と変わる。

そのうち陽が出りゃ暖かくなる、ほんの少しの辛抱と耐えていたのだが、
根性なしどもが次々にボートの中に引っ込んでいくのを見て、
気持ちが萎え、「無理して風引くのは馬鹿」とすぐに主張を変え、
ボートの入り口へとよろよろ近づいたら、遅い。


すでにボートの中の席は一杯で、「詰めてやろうか?」
と気を利かすような顔は見当たらない。
みんな目を合わさない。

困っちゃったな、と機を見るに鈍な連中が
入り口付近で立ちんぼ状態で固まっていた。

仕方ないね、でもそのうち暖かくなったら絶対屋根の
ベストポジションは俺のもんだからな、今に見とけ、
と復讐を誓っていたら、ボートの従業員らしい優しい顔をした青年が
、女性も金のありそうな旅行者も無視して私を指差し、従業員席といいますか、
ともあれ座れるところにわずかな隙間を作ってくれ、ここ、ここと合図を送ってくる。

皆さん、申し訳ない。
カーゴパンツにTシャツ一枚という若い格好をしてはいますが、
実は50を過ぎた爺さんなんですよ、と心の中でお詫び申し上げ、
あー暖ったけー、やれやれ人心地。

どうもありがとね、若い船員さん。

若い船員さんはいいからもっともっと寄れよ、とひどく親切なのだが、
いやあ、もうこれで充分ですよ、窮屈なのもね、ちょっとね。

すると彼は読んでいた新聞を大きく広げた。

私は彼の左側に座っていたのだが、その広げた新聞を持った右ひじを
私の右太腿に置いた。
あらららら、どうしちゃったのかしら。
そのほうが読みやすいの?
カンボジア語の新聞なので私にはわからないし、
誰がどう見てもその姿勢には無理があるでげすよ。

しかし、彼はかたくなである。

そのうち彼の右ひじが私の太腿の付け根に尺取虫のように
移動しているように思えた。

勘違いだといいなあ。

私はケツが痛い振りをして、足の位置を変えたが、
彼の右ひじは強力接着剤でくっついたように離れない。

彼も位置を変え追いかけてくる。

おかしいよ、君。

周りにはたくさんの人がいるし、いなくてもおかしい。

いかん。
足を組もう。
左足を右足の上に乗せ、さらに本を取り出し、
両腕でがっちり局部をガードした。
これでひと安心と思ったら急に眠くなってきた。
朝5時に起きたから仕方ない。

念のため身体を折って、ウトウトしてたら尋常でない感触に目が覚めた。
いつの間にかほとんど船員さんの手は股の間に入り込んでしまっている。

痴漢船員に変身していた。


「おっ!陽が出てきた!」
とあえて声を出し、これを待っていたんだとばかりにすくっと立ち上がった。

「よし、屋根に上がろう。ありがとうね」
と不届き者に一応お礼を言って、そそくさとその場を後にした。
何故その時に相手の手をつかんで大声を上げなかったのか、
といぶかしく思われる方もいるかもしれないが、
実は度胸がなかったのではない。
カンボジアで同性愛者がどういう扱いを受けているのかわからなかったから、
あえてそういう行為には及ばなかったのである。

国によって同性愛者は厳罰を下されることがある。
東南アジアはタイのように同性愛者に寛容な国もあれば、
罪に問われるマレーシアのような国もある。

それまでのカンボジアでは同性愛者と一目でわかる格好の人間がいなかったので
判断がつかなかった。

あの場面で大声を上げていたら、彼は職を失っていたかもしれない。
もっとひどいことになっていた可能性もある。
格好を付ける気はないが、万が一にもそんなことにはなって欲しくなかった。

痴漢行為はやめて欲しいが、彼は私もゲイだと思っていた節がある。

だから、私を指名して隣に座らせたのである。

痴漢と間違えられるほうが彼には不本意かもしれない。

屋根の上は快適であった。
照り返しもあるので暑いが、今度はボートの中のほうが苦しいはずである。
先ほどの青年はジュースを売って回る。

隣に座ってタバコを吸うかと差し出されたが断った。

しきりに話しかけてきて、ひょいと股間に手を回そうとするのを今度は
「これはだめ」
と腕を取って払いのけると、カンボジア語で恨めしい口調で話し続ける。

「お前はゲイじゃないのか?」
と聞いていたのかもしれない。
それから何度もジュースを売りに回ってきたが無視をした。

そのたびに悲しそうな視線を送ってきた。

今は素晴らしいパートナーと出会えて、
幸せに暮らしていることを切に願っている。

全然関係ない話で恐縮だが、
電車の中で男が男に痴漢行為を働いた場合は罪に問われるのだろうか?
日本に帰ってきて、それが気になって仕方がない。

という文章をあるところで書いたんだけど、ほとんど陽の目を見なかったんで転載いたしました。

私はロンドンでゲイの部下ととても仲が良くて、よくお互いの家を訪れて彼のパートナーとも飯を食っていたんで、全く偏見はないんだけど、ストレートでも同性愛者でも痴漢はダメよ。
私が若かりし頃、メイクの方(男性)に「ほっぺ!」なんて言われて、頬を突っつかれたことがあるけど、そのくらいは問題ありません。

カンボジアのコンポンチャムで伝統舞踊アプサラの練習をする少女。