寝た

毎回旅に出るとしばらくの間時差に苦しんで、昼間映画館で眠り込んでいたり、夜中に六本木辺りで朝まで寝られないから飲んでいたりする。
しかし、さすがに昨日も書いた通り、寝ない日が続き、朝9時に成田についてから、自宅でなんやかんや整理していたら妙に興奮してきちゃって、夜まで寝なかったため9時からドラマでも見て、それから寝れば時差は解消できるだろうと計画を立てていたら、ドラマが始まるとすぐに寝てしまっていて、今朝目が覚めたら9時だった。都合12時間寝てました。

やっぱ、俺はいい歳なんだ。
もうすぐ56だ。
真っ黒に日焼けして帰ってきてる場合じゃないんじゃないかしら。
いつまでもバックパッカーやってるとバカになるかな。
疲れるのもほどほどにしとかないと、あちこちにガタが来る。
実はもう来た。

ジョージアからアルメニアに戻る日の朝早くどういうわけかすごく重くなってしまったバッグパック肩に引っかけ、もう片方にカメラバッグをぶら下げて、宿のばあさんに「いろいろありがとうね。楽しかったよ。またね」とお愛想を言って、一歩下りの坂道に踏み出した瞬間、ガクンと左の腰に衝撃が来た。
何かにつまづいたかといい方に解釈しようとしたんだけど、実は分かっておりました。軽いギックリである。
何がそんなに重いんだろうと訝しんだんだが、それも分かってんだよ。
CD買いすぎたんだよ。アルメニアジョージアで大量のCDを買い込んだからなんだよ。

どちらの国もCDショップというものが極端に少ない。
アルメニアではインド並みにMP3でプリントしたものが、見るからにいい加減そうな小さな店で売られているが、1枚下手すると150円くらい。こういうものを買って帰っても再生できないことが多い。また、再生できても音飛びがあったり、そもそもそんな海賊版をラジオでかけてもいいのかという問題が残る。
何故まともなCDショップがないかと申しますと、アルメニアの人口は公称300万人超(異論があちこちで出ていましたが、それは別の機会に)、ジョージアは450万人程度。どちらもアルメニア語、ジョージア語で歌っているので私のような物好きでない限り外国人が買って帰ることはない。素晴らしい音楽なんだけど、皆さんそれを知らずにお帰りになるんですよ。阿呆ですね。
また、正規に製造されたCDはMP3のものの10倍くらい高い。
個人所得を考えると売れないですよ。
それに人口がその程度だから、お金があって買えたとしても売れる量には絶対的な限界がある。
ミリオンセラーが出たら天地驚愕の事態でしょ。
だから、これではまずいと素晴らしい音楽をきちんとした形で残そうという運動を私はあちこちの国で地道に続けていて、CDをいつも大量に買い込んでくるのである。おかげでどこにどのCDがあるんだか分からなくなってしまっているけど。

ともあれそういうCDを紹介したいので、ぜひどこかの局で番組をやらせてください。
あからさまな売り込みでございます。

そんなわけで、ギックリになったと分かってからも、無理して笑顔を作り、ばあさんに手を振り、それがまた腰に響いたりしながら、タクシー乗り場までたどり着いた。それから乗り合いバスでしょ。
もう腰は悲鳴を上げてんのよ。道は一応舗装されているんだけど、穴ぼこだらけで右に左にバスは穴を避けて走るし、当然穴に入り込んで激しく上下する。窓際の席に押し込められていたもんだからその度に頭を窓枠にガンガンぶつけて痛くてしょうがないが、それ以上に腰が泣いている。

その夜以来、ずっと腰には湿布を3枚貼り込み、痛み止めを飲んでしのいでいるのだが、いい加減にしないと本格的にまずいことになりそうな気がする。明日また整形外科に行かなきゃな。
「今度はどうしました」
「ちょっとアルメニアジョージアに行ってきたんですが、腰に来まして」
「なにしに行ったんですか」
「いや、仕事のような、そんな感じで」
って嘘つかなきゃ。

そんなわけで疲労バックパックの重量には厳重注意である。
若い人は好きにすればいい。
君たちにはまだ明るい未来がある。
こっちは昔ならとっくに定年のじいさんだ。
今後はさらに荷物を減らす研究を重ねないといかんな。
でも毎日の洗濯も結構疲れるんだよ、と言い訳ばかり。

じじいのいいわけほど見苦しいものはないな。
忘れてくれ。

このときはまだ50だったんだよーん。
バクタプル、ネパール。