方言に苦労しない若者

私の方言苦労話は何度も書いたので、なんだっけと忘れちゃった人は探して読んでみてね。

昨日、3年前、下関から青雲の志を抱いて上京してきた私の親友であるところのミキちゃんの息子の送別会を家族全員でやりました。
何しろ人質を預かっているようなもの。
ミキちゃんが上京してくるたびにウニだ、ラーメンだとお宝を持ってきてもらえるんで手放せなかったんだけどな。
ついに退学する決意を決め新たな人生を目指すことになった、ということがあったら大変で、私の政治生命は絶たれるとこだ。
政治活動してないけどさ。

一年休学してアメリカに行くってことになったので、トゥールダルジャンでドンペリ一気飲みさせてお祝いしました。
つまらんなこういう嘘は。
近くの焼き肉屋さんでごちそうだ。

このよくできた息子は、親に似ず、下品な飲み方は一切しない。
酔っぱらってるのを見たことがない。
親を介抱しているのは何度も見た。
ガキの頃は娘を連れて帰ると、猛獣のような姉たちの中でじっと自分の立ち位置を決めているような洟垂れだった。
ミキちゃんの家の猛獣たちは常軌を逸していて、頭が割れそうになるほどの大声で下関弁のみで騒いでいた。
娘はそういう状況に不慣れで、沈黙を守り続けていたんだけど、それに気がついた息子はこっそり娘にささやいていたものだ。
「ワシらが下関弁しかしゃべらんけーだまっちょるんかね」

ホント、「ちょる」「そ」「ほ」という語尾に付くおかしな符号は何を意味しているんだか。
何のことだかわからないでしょ。
私もうまく使えなくなってしまったもん。

その息子が上京してきてから、彼が下関弁を口にしたのを聞いたことがない。
我が家では私がミキちゃんと下関弁で話すもんだから、たまにブームになることがある。
「こーてくれりーね」とかメチャクチャなこと言うので、「それは『こーちゃりーね』が正しい」とかいちいち直してやらなければならないのが面倒である。
ちなみに「買って上げなさいよ」という意味です。
「買ってよ」は「こーてーね」です。

「そういう方言は出んのかね。聞いたことないね」
「下関から福岡に移ったときに、すごくバカにされたんで気をつけるようになったんです」
「博多弁はどげんかね」
「博多弁は出ません」
「おえりゃーせんねー」
何を話しているのかわからなくなってくる。
「東京に来たら、ぱったり方言が出なくなったんです」
「出んってことはないやろ。うっかり出て恥ずかしくて寮の部屋で3日間くらい布団にくるまっちょったことないかね」
「ないです」
「なんでかね」
「自分でもよくわからないんですけど、東京の人と話すときは、意識しなくても出ません」
ワシらの時代とはえらい変わりようじゃ。
幼稚園児が東京弁喋っているのを聞いて、俺は人間失格だと部屋から出られなくなったこともあるのに。

「それやったらアメリカに行ったら、意識しなくても英語で話よるんやろうね」
「それは無理です」
「えー、なんで?」
という具合にとても楽しい時間を過ごしました。

大昔、インドにツレと二人で行ったことがあるんだけど、私には相手が何を言っているのか全く聞き取れないのに、英語のできないツレが「それ、こう言ってんじゃないの」と横から口出しするのが当たっていたりするのが悔しかったことが何度もありました。
とけ込むことが大事だね。

コチ、インド。