アメリカ人、イギリス人、日本人に関するペラペラの考察

昨日のシャーロック・ホームズを引きずっていて、ロンドンに行きたーいとは思わず、また住みたーいとかなわぬ夢を見ている。

昨日アメリカにいた日本人の友人に会ったら、ロンドンに行きたいとはかけらも思わないという。私はニューヨーク、ロサンゼルスで暮らしたいなんて考えたこともない。アメリカ人が嫌いなわけではない。趣味の問題。

アメリカに強制移送されて英語を特訓させられていた時に、ラングゥエッジ・パートナーに指名されたこちらとしては決して壁を越えたお友達になりたいとは全く思っていなかった女子学生に「必ず電話してね」って目を覗き込むように言われたから、電話してみたら「あーん、なんかちょっと誤解があったみたい?」ってなんだよ。おめーが熱心に誘うからだろ。

ややこしいのは、女子学生は本気の厚意で「電話してね」と言っていたということである。では、何故あのような電話での会話になったかであるが、言ったとたんに忘却していたのである。頭悪いのかというとそうでもない。

このことを英語の教師に話してみたら「アメリカ人はその場では純粋に人をもてなそうとするけど、そこの空気で言っているところがあるのよ」と解説してくれた。
日本の「本音と建前」よりも薄っぺらい。
外交上のダブルスタンダードは日本以上に根が深い。

どの国にもあるといえばそういうことなんだけど、私はイギリス人のほうが相性が良い。
とっつきは悪いが、友人になるとしつこいくらいまつわりついてくる。やや日本人に似ている。
日本人の「本音と建前」について彼らはブチブチ文句をたれるが、私から見れば同じようなものである。日本人はごまかすのが下手。彼らは「謝らない」学校教育を受けているので「メチャクチャだ」、とこっちが思っても押し通す胆力があるとでも言うのですかね。ダブルスタンダードアメリカよりもたちが悪い。
楽しい。

アメリカ人は当然人によるが、比較的平易でストレートな表現を好む。
ビジネスレターなんか読むと、あまりにも取り付く島がないくらい、必要なこと以外書いていない。

エッセイ(あちらでは日本のエッセイの意味ではなく小論文)の宿題なんか出て、日本人的にゆるゆるした出だしで始めると、「何が主張したいのかわかりません」と厳しく指導される。「まずど頭で主張をぶちかませ」としつこい。「それでは共感を得る導入が」なんて反論しても意味が通じないから無駄である。

基本すべてが演繹法で成り立っているのである。
悪の枢軸、許せん」「やってみろ、ぶちかます」が冒頭に来る。
で、その理由、あるいはこじつけが後からついてくる。

これには同じ学校に行っていたエチオピアやトルコの学生からも「まず結論書いちゃえば喜ぶからいいんだよ」と無理やり納得していた。

帰納法で人間が成り立ってしまっている私には辛かった。
つい、掴みから入ろうとするので、異常に受けが悪い。
「その掴みはいらんねん」と突っ込まれる。
「おもろないやん」
「なんでおもろせなあかんの」
という会話はなかったが、無言の睨み合いである。

特に修辞を重視するタイプのお年寄りの先生だったので、演繹、修辞がなってないとバッテン。
帰納、構成で攻める私とは相容れない。

しかし、大学院に移されて、エッセイをガンガン書かされ始めてからは、割り切った。
結論から書きゃいいんだから、本当は簡単なのである。
「驚くほど文章がうまくなった」って褒められました。
うまくなってねえんだよ。
合わせただけなの。

イギリスは楽しかった。親しくなった友人とのFAX、レターのやりとりでは必ず皮肉をたっぷり含んだ前段を入れないとバカにされるので、そうしていた。
もしかしたら、勝手に思い込んでいるだけで、相手をすごく傷つけていたかも。
今でもそうしている。
もう55になるし、それでいいか。

会話もおかしなのに当たるとこれでもかというほど、もってまわった話し方をする。
このお話はどちらへ向かうのかしら、と戸惑うことさえある。
でも日本人に少し似てるでしょ。

そのイギリス人が日本から来た本社の役員の表敬訪問には、いつも参っていた。
「シン、彼らは何を話したくて来たんだ?俺は何かすごくまずいこと言っちゃったか?」
というほど、日本人である私にも意味不明であることが多かった。

私が通訳するんだけど、同じこと10回くらい言うんだもん。しかも、「頑張ってくれ」を10通りの言い方で繰り返すもんだから、5分しゃべっても英語では30秒くらいにしちゃう。「お前、全然訳してねえだろう」と見破られても、「大丈夫です。意味は通じてます」と逃げたね。長いこといると図太くなれるもんですよ。

シャーロック・ホームズではイギリス人のジュード・ロウがワトソンで、アメリカ人のロバート・ダウニーJr.がホームズだったんだけど、あれはうまくいってたのかしら。映画面白かったからいいんだけど。

今度はメリル・ストリープサッチャーだよ。
よくアメリカ人がイギリス人の役をやると、発音がおかしいとからかわれるが、発音だけなんだろうか。中身は役者だからうまくこなしているのかね。その辺は私にはうかがい知れないところである。

ロンドンから車でちょっと走ればこんなとこだから、「俺はイギリスの天気が嫌いなんだよ」と話していた昨日の友人の気持ちも分からないではない。
でも私は好き。