グルジアは何故ジョージアが正しいのか

帰ってきてからグルジアは本来ジョージアと呼ぶべきであると繰り返しここで書いてきたが、そろそろ理由をちゃんとお伝えしておかないと、大倉が勝手にそう言ってるだけなんじゃないか、ということになることは必至であるから、ご説明申し上げます。

いきなり本筋から離れてしまうが、自国で呼んでいる国名と英語で呼ばれる国名が異なることは多々ある。
USAはUSAだからアメリカ人には何のことやら、であろうが、そうでない国は国によってはなんでそんなおかしな名前で呼ばれなきゃなんないんだよ、と憤っている方々もいらっしゃると思う。
英語中心に世界が回っていることについてはなんだかむずむずすることもあるな、私は。

日本はニッポンあるいはニホンと国内では呼ぶのが当たり前で、日本人同士で「ジャパン人はさ」とかやっているとどうかしていると思われる。ただ最近では「サムライジャパン」だの「ナデシコジャパン」だの、わかりにくくなると「ザックジャパン」などと呼ばれておりますが、あれは民族派の方々はよしとされているんでしょうかね。
ともあれ、英語で漆器を意味するjapanがJapanとなり日本を意味しております。

中国は陶器を意味するchinaがChinaになりました。
大韓民国はKoreaだ。
漢字使用圏では本来の呼び方に近い発音で呼び合っていますね。聞いてもわかんないこともありますが。

少し離れたインドも自国語ではバーラタが正しい国名。

さて、お相撲さんの黒海の出身地は呼び出しでもグルジア出身とされているし、格闘技でも「グルジアからやってきた破壊兵器」みたいなどえらく強い選手もいましたね。
現在日本の報道でもおそらくすべて「グルジアのロシアとの領土紛争」とかいう風に表現されているはずです。
それで我々もグルジアがどこにあるのかは置いておいても、グルジアという名前はしっかり頭に刷り込まれております。

私も出発前から英語表記ではGeorgiaなのに何故グルジアと呼ばれ続けているのかよくわかっていませんでした。かの地の方々はジョージアと呼んで欲しい、と主張していることは知っていましたが。

私の投宿したフレンズ・ホステルという名前だけ聞くと二の足を踏むドーミトリー+ふたつのプライベートルームで構成されている宿は、まあ、それなりの宿でどうにかなったのだが、ここを経営している若主人は非常に頭がよく英語も達者でこちらのややこしい質問にも時間を惜しまずにわからないことは調べつつ丁寧に教えてくれた。
本当のことを言うと従業員のお嬢さんが立ちくらみがするほどのスカーレット・ヨハンセンを思わせる美人で、笑顔が太陽のようで、英語は超ペラペラなもんだから、彼女にお話を聞こうと思っていたのだが、彼女だけのときを見計らって下に降りて行き、いい感じで会話を始めるとどこからか必ずその若主人が出てくる。
結果的にはそれでよかったんだけど、もう少し気を使ってはどうかな。

で、かなり突っ込んだ話をしていたところで、「忘れちゃいけない」と突如思い出し、尋ねてみた。
「あのさ、この国はグルジアジョージア、どちらで呼ぶのが正しいの」
ジョージア!」
なに言ってんだという勢いで答えが返ってきた。
「でもさ、日本じゃグルジアって呼んでるよ」
「間違い。すっごく間違ってる。お前もわかっていると思うけどジョージアには自国名の名前がある。サカロトヴェロだ。この名前は古代ギリシャでも記録されている民族名に由来している。それは、俺たちが自分の国を呼ぶときに使うだけだからいいんだ。ただ、ジョージアグルジアと呼ぶのだけはやめてくれ。なぜならグルジアジョージアのロシア語読みだから」
「え、じゃあ、ソヴィエト連邦の中にいたときからジョージアって呼んでたの?」
「ずーっとジョージア人はジョージアのことはジョージアって呼んでた」
「でも、国名はグルジア共和国になってたじゃん」
ソ連に押さえつけられていたときに無理矢理そうさせられていただけで、望んでいたわけじゃない」
ここで、私はでもスターリンはここ出身じゃん、とは言わなかった。
スターリンの出身地だからといって一般人はそう思っていなかったんでしょう。

そんなことがあり、2009年、ジョージア政府は日本に対し、国名表記をグルジアからジョージアに変えるよう正式に要請している。
現在は完全な独立国なんだから、要請を受けない理由は全くない。
グルジアはやめよう。
ジョージアの人々政府がそう呼んで欲しいと言っているんだから、そうしようよ。
アメリカのジョージア州と紛らわしいとか、缶コーヒーと間違えそうとか、そういうご意見もあるようだが、それは些末なことでしょう。
ジョージア、愛すべき国です。

ネパールは自国でも英語でもネパールです。
カトマンズ、ネパール。